サステナビリティ

TCFD提言への対応

当社グループは気候変動をサステナビリティ重点課題の1つとして認識し、金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同するとともに、今後は、TCFDに沿った情報開示の拡充に取り組んでまいります。

 

TCFD提言への取組み(2024年度版)

ガバナンス

小売・物流を生業にしている当社グループにとって、気候変動によるリスクは事業継続に影響を与える重要課題と捉えており、以下の通り体制を整えております。
サステナビリティに関わる方針及び戦略を決定するグループサステナビリティ委員会はカクヤスグループ代表取締役社長を委員長とし、グループ各社取締役及び執行役員で構成され、四半期に一回の頻度で開催しております。
気候変動における具体的な取組みは、当委員会傘下の環境分科会が各事業の主幹部門と連携して推進し、当委員会事務局が進捗を管理しております。その上で、重要事項はサステナビリティ委員会にて討議した後に、取締役会での報告を通じて進捗状況を監督しております。

 

カクヤスグループサステナビリティ推進体制

体制図

戦略

(1) リスク・機会の特定

気候変動リスクについては、GHG排出に関する規制等の脱炭素経済への「移行」に関するリスクと、気象災害の激甚化等の気候変動による「物理的」変化への「適応」に関するリスクが考えられ、それらは、グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これらのリスク・機会による影響の発現時期並びに簡易的なシナリオ分析に基づく財務インパクトを定性的に評価しました。

気候変動に関する主なリスク・機会

  時間軸 短期:3年程度 中期:2030年頃まで 長期:2050年以降
発現可能性 高:発現が見込まれるもの
中:ある程度の発現が見込まれるもの
低:めったに発現しないもの
影響度(売上高) 大:100億円以上 中:10億円以上100
億円未満
小:10億円未満
影響度(費用・利益) 大:3億円以上 中:30百万円以上3
億円未満
小:30百万円未満

 

リスク・機会の項目 事業影響 時間軸 発現
可能性
影響度
移行
リスク
炭素価格の導入 炭素価格の導入による操業コストの増加 中期
フロン規制強化 拠点におけるノンフロン設備等への投資コストの増加 中~長期
エネルギー価格の上昇 燃料価格等の上昇による操業コストの増加 中期
原材料コストの上昇 仕入先の気候変動対応費用が転嫁されることによる仕入コストの増加(または仕入価格の上昇) 中期
低排出技術への移行 配送車両のEV化等による操業コストの増加 中期
環境配慮設備の導入等に伴う設備投資コストの増加 中期
消費者、投資家の評判変化 環境配慮への遅れによる企業評価の低下 短~中期
物理的
リスク
気候災害の激甚化 店舗や配送拠点の浸水等による被害、休業による売上の減少 中~長期
仕入先の被害による仕入停止や遅れによる仕入コストの増加と売上の減少 中~長期
降水・気温パターンの変化 計画休業の増加による売上高の減少 中期
平均気温の上昇 労働生産性の悪化による売上の減少や操業コストの増加 中期
海面上昇 風水災の頻繁化・激甚化によるサプライチェーンの途絶に伴う売上高の減少と移転コストの増加 長期
機会 低排出量商品およびサービスの開発および拡張 回収サービスの需要拡大による売上の増加 中~長期
消費者の嗜好の移り変わり 環境配慮型商品・サービスの開発による売上の増加 短期
新たな市場(需要)へのアクセス 気温上昇による顧客の嗜好の変化に合わせた商品・サービスの開発による売上の増加 短期

(2) シナリオ分析のテーマおよび気候変動シナリオの設定

抽出・整理した気候関連リスク・機会について、特に発現可能性が高いと考えられるテーマについて、シナリオ分析を実施しました。
本分析においては、国際的に通用するIEA(国際エネルギー機関)によるWEO(世界エネルギー見通し)に示される「1.5℃シナリオ」であるSTEPSを含む2つのシナリオを用いて評価しておりますが、一部のパラメータはNGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)によるシナリオに基づいて補完しています。

 

分析テーマ 炭素価格の導入およびエネルギー価格の変動の影響
分析対象 1. 炭素価格の導入による操業コストの増加(スコープ1,2)
2. 化石資源価格や電力価格の変動による操業コストへの影響
対象範囲 カクヤスグループ全事業(一部子会社除く)
評価時点 2030年、2050年
基準年 2022年

 

シナリオ名 参照外部シナリオ
現行シナリオ
(2.4℃シナリオ)
=STEPS
IEA WEO 2023 STEPS/NGFS NDCs(電力価格のみ)
・世の中の脱炭素は現在公表されている政策にとどまり、これ以上進まないことを想定。産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇が2100年頃に2.4℃程度となる世界。
・各国が化石資源に依存するため、化石資源の価格が高騰する傾向にある。
・炭素価格は、2030年では1t-CO2当たり$120、2050では1t-CO2当たり$135として試算。
脱炭素シナリオ
(1.5℃)
=NZE
IEA WEO 2023 NZE/NGFS NZ2050(電力価格のみ)
・世界のエネルギー部門が2050年までにCO2排出量のネットゼロを達成するため、大胆な政策や技術革新が進み、産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇が2100年頃に1.5℃を下回る世界。
・各国が化石資源から転換するため、化石資源の価格が低下する傾向にある。
・炭素価格は、2030年では1t-CO2当たり$140、2050では1t-CO2当たり$250として試算。

(3) シナリオ分析結果

分析テーマ炭素価格の導入およびエネルギー価格の変動の影響

本テーマは、定性評価において利益に与える影響度が「中」という結果でしたが、脱炭素に向けたグローバルな取り組みのなかで、日本においても炭素価格の導入が見込まれるなど、特に発現可能性が高く、企業活動におけるGHG排出に対して一定の財務的負担の発生が見込まれます。

 

当社グループは、国内において酒類等の販売を行っており、飲食店向けの配送や一般家庭向けの宅配・店舗販売といった活動において電力やガソリン、軽油などの使用にともないGHGを排出しております。複数の温度上昇のシナリオを想定し、それぞれについて当社事業活動の低炭素化の将来想定もあわせて考慮することで、当社事業に対する財務的影響をより詳細に把握できるようにしています。
また、事業活動に必要なエネルギー使用(GHG排出源)やエネルギー価格の変動もあわせて分析することで、当社の事業活動の実態により近い分析が可能であると考えられます。

前提条件

  • 炭素価格の将来的な操業コストへの影響を予測するため、当社グループのScope1及びScope2排出量に課される炭素価格による財務影響とエネルギー価格の変動による財務影響について、将来的な影響額の変化を評価時点(2022年)からの差額で分析しました。
    (財務負担(コスト)を正、逆に負担が減少する場合を負で表しています。)
  • 2030年、2050年における当社グループの活動量は、関連する業界の将来予測や人口動態などの社会・経済のトレンドを左右する要素を考慮して見通しを立てました。中長期的には当社事業における売上高の増加とこれに伴うエネルギー使用量の増加を見込んでおります。 以上をベースとして、脱炭素シナリオにおいては、当社グループが「省エネルギー活動を行わない場合」と「省エネルギー活動を行う場合」のそれぞれについて、エネルギー使用量を見込んでおります。

分析結果

現行シナリオ 脱炭素シナリオ(省エネなし) 脱炭素シナリオ(省エネあり)
2030年時点 278百万円 263百万円 196百万円
2050年時点 224百万円 23百万円 △130百万円

炭素価格の導入およびエネルギー価格の変動による将来的な財務影響額

■2030年

 

■2050年

  • 炭素価格やエネルギー価格の変動が与える影響(コスト)は数億円程度と見込まれることから、当社グループの財務への影響は限定的であることが分かりました。今回実施した分析の想定においては、分析対象としたリスクに対し当社グループはレジリエンスを有していると考えられます。
  • 脱炭素シナリオにおいて、省エネ活動をすることで、財務負担を小さくできるだけでなく、エネルギー使用量そのものの削減による効果のほか、GHG排出量削減にともなう炭素価格負担の軽減による効果も見込めます。当社はエネルギー効率の低い空調・冷蔵設備の入れ替えやLED照明への切替えなど、省エネの取り組みを進めております。また、脱炭素の取り組みとして、配達用EV軽車両の導入や従来型電力から再生可能エネルギーへの切り替えなども積極的に進めております。引き続き、設備・機器などの入れ替えの投資検討を進めるとともに、その他の様々な取り組みを通じで、2050年カーボンニュートラルの実現と脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
  • 今回参照したIEAのシナリオにおいては、基準年の原油などの化石燃料価格の高騰を受け、それらは将来大幅に下落することが見込まれており、そのために財務影響が小さい(またはプラスになる)ケースが一部にみられております。分析結果は、現在入手可能な最新のデータに基づいて得られたものであり、予測が異なれば結果もそれに応じて変わりうるものとなります。

今後も、当社グループ事業と関連性の高い重要なリスク・機会については、必要に応じて詳細なシナリオ分析を実施し、対応戦略の検討を進めるなど、情報開示の充実化を図ります。

リスク管理

カクヤスグループでは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づき、財務影響をもたらす気候変動関連のリスク及び機会を識別し、評価しております。
リスクと機会の抽出は、当社グループ全体を対象に当委員会事務局が行い、当委員会に報告しております。
抽出されたリスク・機会がもたらす財務影響を分析し、環境分科会を中心に対応策を検討し、当委員会に報告した上で、各事業の主管部門とともに取り組みを推進しております。影響度の高いリスクについては、委員会事務局より当社グループのリスク管理委員会に共有し、監理しております。

指標及び目標

当社グループの売上の8割以上は、酒類・飲料を中心とした商品をお客様へ配達することから成り立っており、主に配達によって生じる温室効果ガスの削減が課題となります。
気候変動におけるリスク・機会を管理するための指標として、温室効果ガス排出量(スコープ1・スコープ2)を計測し、現時点では2050年までの長期目標として、温室効果ガスの排出量をネットゼロにすることを掲げ、目標達成に向けて取り組んでおります。

 

スコープ1、スコープ2の温室効果ガス排出量

分類 排出量(単位: t-CO2) 対象
2021年度 2022年度
スコープ1(直接排出) 4,439 5,321 当社及び連結子会社5社
スコープ2(間接排出) 5,837 6,592
合計 10,276 11,913

※集計期間: 当社グループ各社の2021年度決算期間(12か月)

※対象会社:2022年度の算定の為、カクヤスグループ、カクヤス、ダンガミ・サンノー、明和物産、検校、NSKの計6社で算定しております。

※スコープ2はマーケット基準を採用

 

スコープ2につきましては、2021年度はロケーション基準で開示しておりましたが、温室効果ガス排出量の削減施策として、2024年度より一部拠点の使用電力を再エネ由来電源に切り替えました。今後、効果検証を行うため今年度よりマーケット基準を採用しております。

2022年度は感染症による活動自粛が緩和されたことによる活動量の増加や取扱商品の拡大による設備投資などの影響を受け、排出量が全体的に増加傾向にありますが、配達車両としてEV車両の導入や、再エネ由来電源への切り替えなどの温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みを強化してまいります。


物流を担う企業として、サプライチェーンにおける排出量も重要であると認識しており、Scope3の算定も今後検討してまいります。

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